昨晩は11時半頃痛み止めを飲んで、5時間くらい眠った。ガーゼ抜きのことで緊張していたのか、あまりよく眠れなかった。朝食後に痛み止めを飲もうと思っていたが、7時になっても朝食が出てこないので、冷蔵庫に残っていたヨーグルトを食べ、胃を動かしてから痛み止めを飲んだ。その後すぐに朝食が出てきた。今朝の献立はけっこう盛りだくさんな感じだ。
歯を磨いて部屋に戻る途中で先生と会い、予定より少し早く診察室に来るように言われた。そわそわしながら部屋で過ごす。
時間だ。一階下の診察室まで徒歩一分。診察用の椅子に座ると、マメ型のバットを持って顎の下で持つよう言われた。鼻に入っているガーゼは右に7枚、左に7枚の合計14枚。顎を上げて後頭部を診察椅子に付けると、先生はピンセットでするするとガーゼを引き抜いていった。先生の額についている丸い鏡にすごいものが映りそうだったので見ないようにした。ガーゼを引き抜くときにいやな音が聞こえるのと痛みがあるが、想像の5分の1くらいで、全く耐えられる程度だった。聞いた話では気絶してしまう人もいるというので恐怖していたのに、なーんだ楽勝だなーと思う。しばらく鼻血が出たままになるので、飲み込まないようにうつむいたまま、しばらくじっとしているよう言われた。処置室に移動する途中で、バットに取り出されたいろいろなものまみれのガーゼを見て思わず声が出た。
鼻からポタポタと垂れる血を、せっかく作ったのにもったいないなぁと思いながら眺め、時間が経つのを待った。年配の看護婦さんが優しく血圧を計ってくれた。1回目は上が149の下が98と高かったが、2回3回と計るにつれ平常値に戻っていった。途中で何度か先生が様子を見に来た。
15分ほど経って診察台に戻り、再び鼻の穴を診察。先生曰く「あ〜、真ん中に溜まっちゃってるわ。通りでなかなか血が出ないと思ったよ」
僕の場合、左の鼻の穴から鼻中隔を少し切って、そこから鼻の軟骨を取り出したのだが、術後に出てきた血が鼻中隔を取り除いた粘膜の中に溜まってしまっているのだという。鼻中隔血腫といって、50人に一人くらいでしか起こらず、どんな人がこの症状になるのかもわからないレアケースらしい。うれしくない当たりくじをまた引いてしまったようだ。
麻酔薬を染ましたガーゼが再び鼻の穴に詰め込まれていく。処置室で鼻血を見ながら待機。15分ほど経ったら診察台でガーゼ交換。これを5回ほど繰り返した。麻酔薬が効いてきて上顎が痺れる。暇なのに意識ははっきりしていたので鼻血でティッシュにスマイリーを描いてみたりする余裕もあったが、さすがに5回もガーゼを出し入れすると大きく消耗した。最後にガーゼを詰め直した時が今回一番痛かったものの、全体的に脱ガーゼは想像していたよりずっと穏やかだった。
処置室で待つ間、隣の診察室でいろんな患者さんをてきぱきと診察していく先生の声を聞いていた。耳がたまに聞こえなくなるという、口調が超丁寧だけどあんまり人の話を聞いてないマダム、耳垢で聞こえが悪いおばあちゃんと付き添いのおばさん、遠洋漁業に出る前の検診を受けに来たおじさん… こんなに短時間で様々な人と接するお医者さんという職業の大変さを感じると同時に、常に明朗で優しく答えてくれる先生の態度に敬服させられた。
看護婦さんに付き添ってもらいながら部屋まで戻る。予想より小さかったとはいえ、普段ではありえない痛みに体がショックを感じたようで、頭がぼんやりする。しばらく動きたくない感じ。でもお腹は減っていたので昼食は全部食べた。
不測の事態はあったが予定に変更はなく、明日の退院予定は変わらないとのことだ。合計6枚に減ったものの、引き続きたくさんのガーゼが鼻の中。当然まだまだ匂いを感じることはできず、夕食の「鶏肉の香草焼き」も見た目は美味しそうだったが、香草部分に関しては全く感じられなかったので、僕にとっては単なる「鶏肉焼き」に。夜になると痛み止めが切れて、頬から上が全体的にシクシク痛んできた。
痛みで眠れそうになかったので、検温のついでにアイスノンを持ってきてもらった。一週間親切にしてもらった看護婦さん達に、何かお礼がしたいと思った。お菓子など御礼の品は受け取ってくれないと聞いていたので、手紙を書くことにした。書き終わったら歯を磨いてとっとと寝てしまうことにする。