今年もKYOTOGRAPHIEに行ってきました。美術館から京町家まで、京都市中の新旧様々な施設を使って世界各国の写真家の作品の展示が行われる写真イベントで、2013年から毎年この時期に開かれています。多くの作家の写真が一度に観られるのもさることながら、普段は入れないような京都の古い建物に入ることができたり、会場によってそれぞれ趣向を凝らした展示方法も魅力的です。

展示は大きく主会場と副会場(KG+)に分かれていて、主会場の入場にはチケットが必要ですが、副会場は入場無料となっています。主会場は14箇所、副会場は40箇所もあります。パンフレットに主会場の展示内容と位置のわかる地図が載っていますし、各会場で配布されている無料の小冊子に副会場の展示内容が載っているので、あらかじめ大体の見当をつけてルートを設定しておくと見て回りやすいと思います。

前回までは2日間でやや弾丸ぎみに見て回っていましたが、今回は3日かけてじっくり見て回ることにしました。それでも見そびれた展示もありましたが。

KG+#14 真夏の死 | 桑嶋維 (便利堂コロタイプギャラリー)

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日本で唯一、コロタイプという版画技法を使った印刷を行っている印刷所のギャラリー。一辺1m以上の巨大な紙を4つ組み合わせ、コロタイプで刷った徳之島の闘牛(牛同士で闘う闘牛)をプリント。八重山最強と言われた闘牛の姿を、表に現役時代、裏に晩年という形で構成していました。ギャラリーに入るとちょうど桑嶋さんがギャラリートークを始めるところで、いかつい風貌とは裏腹に話が非常に面白く、写真にまつわる話もいくつか聞くことができました。桑嶋さんにとって、写真は自身の研究成果を発表する形であるように思われます。コンセプチュアルなプロジェクトをいかに見た目に面白くできるかという部分に腐心しているという話はとても参考になりました。イギリスのデザイナー集団tomatoとも繋がりがある(なんとこの展示のフライヤーのデザインはtomatoによるもの)というのはとても意外でびっくり。

桑嶋さんの後ろで撮影しているのは中学生の娘さん。とても丁寧にお父さんの作品の説明をしてくれました。

KG#2a Late fall | サラ・ムーン (ギャラリー素形)

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今回のKYOTOGRAPHIEはサラ・ムーンの展示がメイン会場の3つを占め、ここはその一つ。去年銀座のギャラリーでプリントを観てから気になっていた写真家だったので嬉しい。サラ・ムーンの写真の魅力は言葉にするのが難しいです。たぶん言葉以前のものを題材にしているからだと思います。このギャラリーの展示は薄暗い空間での人の背丈ほどもある巨大な写真の展示と短編の映像の上映。特に植物の写真に何かが引っかかるけれども、それが何なのかわからない。この人の写真を観る時はいつもそうです。モヤモヤしたものを抱えながらギャラリーを後にしました。

KG#5 Midway: 環流からのメッセージ | クリス・ジョーダン+ヨーガン・レール (誉田屋源兵衛 黒蔵)

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太平洋のミッドウェー島はアホウドリの繁殖地になっています。しかし近年、人の捨てたゴミが大量に漂着しており、食べ物と人工物を区別できない鳥達がこれを食べてしまう。かくしてアホウドリの多くは胃をプラスチックで満たし死に至るのです。大量のプラスチックにまみれたアホウドリの死体の写真は衝撃的です。そこに写っているペットボトルの蓋は、僕の捨てたペットボトルの蓋かもしれない。写真の持つ大きな力を感じる一方、雑談まじりにギャラリーを後にする学生たちを見るにつれ、その力すら及ばない人々のことを思いました。

KG#6 EXILE–居場所を失った人々の記録 | マグナム・フォト (無名舎)

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アメリカの写真家集団マグナム・フォトが、半世紀をかけて撮り続けてきた、様々な事情で国を追われた人々の姿。京町家の中で、プリントとその説明が書かれた板を手にとって眺めるというのは、普段接点のない人達を近くに感じてもらいたいという試みなのだと思いますが、それはあまりうまくいっているとは思えなかった。これなら点数を絞って大きいプリントで見せた方が良かった。展示方法と主題がマッチしておらず残念。

KG#3 うまれて1時間のぼくたち | ティエリー・ブエット (堀川御池ギャラリー)

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パリ郊外の病院で、生後1時間以内の赤ちゃんを子宮を模した会場内にクローズアップで並べた展示。生まれて数十分しか経っていなくても、もう十分にそれぞれの個性が際立っていて、観ていてとても楽しかったです。赤ちゃんを正面から捉えたごくシンプルな写真だけれど、それがとても力強い表現となっていると思います。シンプルであることは余白があることだ。余白は本質を強調して、広がりを生む。

時間切れで同堀川御池ギャラリーのもう一つの展示は観られず。夜は京都の友人と会って、松尾大社の近くのお寿司屋さんに連れて行ってもらいました。面白いご主人とおいしいお寿司で楽しい夜でした。

2日目に続きます。