KYOTOGRAPHIE 2016 3日目

2日目からの続きです。

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今日も活動はお昼から。昼ごはんはちょっとした縁のある三条のインドカレー屋「ケララ」で。カレーはもちろん、トマトスープもしっかりとスパイスが効いてておいしかったです。さあ今日も行ってみよう。

KG#2b Time stands still | サラ・ムーン (招喜庵)

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三条からはそれほど遠くはありませんでしたが、バスを待つ時間がもったいなかったのでタクシーで招喜庵へ。ここは作庭家の重森三玲という人の元お屋敷で、予約すれば庭も見学できるとのこと。タクシーの運転手さんは招喜庵のことは知らなかったものの、重森三玲はご存知だったようで、東福寺や松尾大社の庭が氏の作品であることを教えてくれました。「喜びを招く。いい名前ですね」

展示はお屋敷中に黒いフレームで吊るされた作品が展示され、土間の壁では映像作品が流れっぱなしになっていました。荘厳な感じの映像のBGMが常にお屋敷全体に流れていて、土佐和紙にプリントされたというサラ・ムーンの何とも捉えがたい写真の不思議さを際立たせます。映像は動物園の動物達の白黒の粗い映像で、やはり写真と共通する作風があります。サラ・ムーンがこの作品を写真ではなく映像にしたのは、動物の動きの中に何かを認めたからなのではないかと思いました。この世界に起きている物事に対する興味や、不思議だなと思う気持ち、自然に対する畏怖の念。サラ・ムーンの作品のベースにあるのはそういったもののような気がします。

KG+#9 Out of Sight. | デルフィン・パロディ (白亜荘)

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招喜庵を出て地図を見ると、すぐ近くに副会場の場所を示す数字を見つけたので、行ってみることにしました。着いてみると実に古めかしい、時代を感じる建物です。通りの向かい側は京都大学なので、ここは学生寮なのでしょう。古ぼけた壁に二枚一組で、福島の人々の写真と言葉が貼り付けてありました。場所とマッチしているかどうかは微妙ですが、よいドキュメンタリーだったとは思います。部屋からは楽しげな話し声が聞こえ、学生達の生活を身近に感じながら鑑賞させてもらいました。

KG#10 The Green Train 緑皮車 | 銭海峰 (ロームシアター京都)

格安の列車で中国を旅する人々を撮った作品。見本の写真の雰囲気がとても楽しげで期待していたのですが、この写真以外はあまり土地柄や時代性を感じるものがなく残念。写真に付随して撮影地とチケットが示されていたんですが、鑑賞者が知りたいのは地名ではなくストーリーではないでしょうか。撮影状況や出来事がほんの一言でも付記されていれば、もっと楽しめたのではないかと思います。

KG#9 PLANKTON 漂流する生命の起源 | クリスチャン・サルデ、高谷史郎、坂本龍一 (京都市美術館別館)

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多種多様なプランクトンの美しい顕微鏡写真の展示。海洋調査船「タラ号」での調査結果が元になっているとのこと。プランクトンはそれぞれが実にユニークな色と形をしていて、暗い会場内に黒背景で撮られた写真は細部までよく表現されていました。映像のインスタレーションは、床に並べられたスクリーンにある効果をつけたプランクトンの映像をBGMと共に流すというものでした。全体的に写真と映像は美しかったのですが、写真とプランクトンの名前以上の説明がほぼなく、鑑賞時に惹きつけられたプランクトンへの興味をさらに膨らませる機会を逸してしまっており、それが実にもったいなかったです。会場内の物販スペースでタラ号の広報誌「Le journal Tara Expeditions(日本語版)」が無料配布されており、これが非常に充実した内容なのですが、気付く人は少なそうです。

同京都市美術館では「コンデナスト社のファッション写真でみる100年」も開催されていましたが、こちらは東京で既に観ていたのでスキップ。

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ちなみに近くの公園ではKYOTOGRAPHIEの野外イベントが開かれていて楽しげな雰囲気でした。

KG#5 Sarah Moon 1, 2, 3, 4, 5 | サラ・ムーン (何必館)

サラ・ムーンの新しい作品集の刊行記念展ということで、何必館所蔵のプリントからのセレクト。ギャラリー素形と招喜庵で観た展示があまりに印象的だったので、比較的モダンな造りの何必館での展示は見劣りしてしまいました。特にこれというテーマに絞られていなかったこともあるかもしれません。

KG#7 Tryadhvan | 古賀絵里子 (長江家住宅)

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古賀さんのことは存じあげておらず、KYOTOGRAPHIEのパンフレットを見た時点でもあまり観に行く気にならなかったのですが、昨日のスフェラビルで古賀さんの写真集「一山」を見かけて、これは観に行かねば、と決意。一番最後になってしまいましたが、これが今回最も素晴らしい展示でした。長い長いロール紙に直接モノクロ写真をプリントし、それを京都市指定有形文化財でもある長江家住宅に宙に浮かせるような形で展示していて、それがそのまま作家ご自身の第一子の出産前、出産、出産後という時間の流れの表現になっています。古賀さんの旦那さんは高野山のお坊さんだそうです。穏やかな表情で生まれたばかりのお子さんを抱いている旦那さんの姿は、親と子、時間の流れ、場所の持つ力、漂う静けさなど、様々なものを感じさせる一枚でした。時間の流れの表現は、古賀さんの家族のストーリーとも言え、去るものと生まれてくるものなど、ただ流れていく時間を定着しただけの映像が、実に普遍的で感動的な力を持っていました。


堀川御池ギャラリーの福島菊次郎さんの写真を観られなかったのは残念ですが、観たかった展示はほぼ網羅できたと思います。振り返るとやはり今回はサラ・ムーン特集だったなぁという印象です。三箇所のどの展示も良かったですが、薄暗い招喜庵の座敷が不思議にサラ・ムーンの作品と合っていて、いつか氏がカメラに収めた光が、いまここにこうやって再現されているのだ、ということが、なぜだか強く感じられました。できることなら畳に坐ってずっと眺めていたかったです。

堀川御池ギャラリーの「うまれて1時間のぼくたち」、京都市美術館別館の「PLANKTON 漂流する生命の起源」、誉田屋源兵衛 黒蔵の「Midway: 環流からのメッセージ」、そして長江家住宅の「Tryadhvan」。それぞれ強く訴えるものがあり、言葉はなくとも自然と考えさせられるものがあるという点で一致しています。それを実現しているのはシンプルで巧みに撮影された写真の力と、見せ方の上手さなのではないかと思います。無名舎のマグナムの展示は、写真は素晴らしくても見せ方がうまくないと伝わるものも伝わらない、という好例になってしまっていました。何かを伝える際、写真そのものももちろん重要ですが、その見せ方というのも同じ位重要なのだと感じました。

展示場所そのものも楽しく、今年もいい展示をたくさん観ることができました。来年も楽しみです。