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アフガンボックスカメラワークショップに参加してきました

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よく晴れたゴールデンウィークのとある日、スカイツリーのほど近くにあるバックヤード・プロジェクトという写真家さん達の共同スペースで開かれた、アフガンボックスカメラという変わったカメラのワークショップに参加してきました。

僕を含めて当日の参加者は7名。写真家さんや雑誌社の方など、やはり何らかの形で写真に関わっている方が多いようです。まずはバックヤード・プロジェクトでプロジェクターを使って簡単にアフガンボックスカメラの成り立ちとその仕組みの説明を聞きました。アフガンボックスカメラというのはその名の通りアフガニスタンで使われていたカメラで、デジカメの無い時代に町の写真屋さんが使用していたものだそうです。政情不安やデジタル化の波などによって絶滅しかけていたこのアフガニスタン独特の文化をオーストラリアの写真家が発掘し、最近になってクラウドファンディングを使って世に広めたのだとか。これを知った今日の先生二人がご自身でそれぞれ自分のアフガンボックスカメラを作り上げ、ワークショップ開催に至ったとのことです。

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座学が済んで、アフガンボックスカメラを(先生が)抱えて近くの公園へ。本当によく晴れて暑いくらいです。明るい光がたっぷりと注ぐこんな日は、アフガンボックスカメラを使うのに最適な日だということをすぐに理解することになります。

さて公園に着きますと、設置する場所を選ぶ必要があります。アフガンボックスカメラで撮影する場所は

  • 現像時に利用できる日陰があること
  • 被写体が暗すぎないこと
  • 安定して三脚を設置できること
  • 近くに荷物が置けること

あたりを考える必要があるようです。カメラを設置したら、撮影の準備です。

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こちらは担当してくださった前田先生のアフガンボックスカメラ。カメラの蓋を開いて、中にネガ印画紙、現像液、定着液を用意します。印画紙はもちろんこの時点で感光してしまわないよう、黒い袋に入れた上で箱に収められた状態です。現像液が右側なのは、蓋についている覗き穴の位置に合わせるためです。また後部のファインダー窓は開閉可能になっていて、扉自体は赤い半透明のプラスチックになっています。赤い光は印画紙に反応しにくいためです(全く反応しないわけではない)。準備ができたら蓋をしっかり閉めます。

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カメラの後ろからファインダー窓を開いて覗いてみたところ。この写真は箱の手前側にピントが合ってしまって残念な感じですが、実際は箱の中のファインダーにカメラの前の景色がとても美しく上下左右反転した状態で映っています。反転しているのはレンズを通して見ているからですね。

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こちらは會田先生のアフガンボックスカメラ。構造は一緒ですが、横開き、ファインダー窓がレンズ、ピントスクリーンに印画紙をセットしやすいフレームがあるなど、いくつか違いがあります。作り手の個性がカメラに反映されるのもアフガンボックスカメラの面白いところですね。

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こちらは使用した印画紙。富士フィルムのキャビネ判の号数紙を半分に切ってあります。ネガ印画紙というのがポイントです。ネガのプリントを一体どうやってポジに反転するのか?その答えは実にシンプルなものでした。

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さて準備ができたら撮影です。カメラの位置、角度、ピントスクリーンの位置を調整して、被写体がピントスクリーンに正しく写っているように設定します。被写体が人間の場合、被写体にもご協力をいただいて位置などを微調整します。ピントの位置が決まったら、上の写真にあるようにピント調節棒に洗濯バサミをつけてピント位置をメモしておきます。

次にレンズキャップを付けるなどしてカメラ内部を全暗状態にし、一旦スクリーンを後部に移動させて作業用の穴から手を突っ込み、ピントスクリーンの前側に印画紙をセットします。この作業は印画紙が感光してしまわないようにするため、完全に手探りで、

  1. 印画紙を箱から1枚取り出す
  2. 印画紙の袋と箱をしっかり閉じる
  3. 印画紙をピントスクリーンに正しく取り付ける

という工程を行う必要があります。印画紙は表と裏があり、また取り付け位置が悪いと像の写る位置も片寄ってしまうので、事前に十分練習しておかなければなりません。印画紙をセットできたら、ピントスクリーンの位置を元に戻します。

普通の写真用フィルムの感度は400くらいですが、今回使用するのはネガ印画紙。感度は実に6程度しかありません。しかも被写界深度つまりピントの合う範囲が狭く、なるべく絞りを絞る必要があります。必然的にとても長いシャッター時間が必要になります。コンディションは正午過ぎ、晴天、木陰。先生の判断で、露出の設定は絞りをf16、シャッタースピードは2秒となりました。カメラにシャッター機構は無いので、代わりにレンズキャップ設定した時間だけ外して露光させます。

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撮影が済んだら現像です。再びピントスクリーンを後部に移動させ、手を入れて印画紙を取り外し、カメラの中に用意しておいた現像液のバットに入れます。このとき役立つのがカメラ上部の覗き窓で、光が漏れないよう眼をぴったりとここにつけて覗くと、真下にある現像中の印画紙の様子を確認することができます。現像が進み過ぎると印画紙が真っ黒になってしまうので、ここで現像液から引き上げる頃合いを見計らうわけです。印画紙に現れた像の濃さが適度になったら、隣の定着液のバットに移動して、1分ほど定着処理をします。

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ここまで済んだら、やっと蓋を開けて結果を確認できます。出来上がったネガを見て一同驚きの声。しっかり写っています!先生を除き全員初めてのわりに、それぞれ特に大きな失敗もなく順調な出だしです。

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こちらは僕が撮影させてもらった別の参加者さんのネガですが、初めてにしては良い出来ではないでしょうか。階調もよく出ています。

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さて、どうやって出来上がったネガをポジにするか。その答えは「ネガを撮影する」でした。カメラのレンズの前に複写用の板を取り付けられるようになっており、そこに出来上がったネガを貼り付け、それを再度撮影するのです。ピント合わせから現像までは撮影時の手順と同じ。実にシンプルです。

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こうして複写が完了すると、めでたくポジの完成となるわけです。このポジは印画紙の取り付け位置が悪かったため、下に複写台の板まで写ってしまっていますね。

ネガの印画紙を使う利点がここにあって、一枚のネガを作成したら、条件を変えてポジを何枚も作ることができます。ここはフィルム写真と同じ考え方ができるわけです。実際、過去には複製時に焼き込みや覆い焼きなどが行われていたようです。

実に滞り無くお互いの撮影が済んでしまったので、ここからは各自のクリエイティビティを発揮して移動しながら好きな物を撮ってみようということになりました。

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公園に来ていたおじさんを撮ってみたり。

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どこまで接近して撮れるか試してみたり。

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どこまで恐ろしい写真が撮れるか試してみたり。

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僕は前田先生にモデルになっていただき、木々の間に立ってもらって撮影してみました。これがネガ。紙はL版程度の大きさです。引き伸ばしレンズのイメージサークル(投影像)の大きさがはっきりわかりますね。

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こちらがポジ。我ながらなかなか雰囲気のある写真ではないでしょうか。肉眼では木々の間にビルが見えたのですが、うまい具合に白飛びしてくれました。この引き伸ばしレンズは確か焦点距離80mmだったと思いますが、35mm判換算では24mmくらいになるようで、かなり広角です。もうちょっと近づいて撮ればよかった。

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こちらは二股の樹を近くで絞り開放で撮ってみたもの。ピントとカメラの角度が少しずれてしまったようで、思うような効果が得られませんでした。しかしネガはとてもシャープですね。

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最後は皆で記念撮影。日が暮れていく中での撮影だったので、露光時間は20秒にもなりました。左から2番目の前田先生が透けて見えるのはシャッター係だったからで、レンズキャップを外し→ダッシュで列に加わり→露光を待ち→ダッシュしてレンズキャップをはめる、という軽業を演じなければならなかったため。出来上がった写真は、撮影時期がいつだかわからないようなビンテージ感あふれる写真になりました。印画紙に直接焼き付ける写真というのは、フィルム写真ともまた違った質感があるようです。

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ワークショップ終了後は浅草の有名なビルに繰り出して打ち上げ。最後までとても楽しい一日でした。一緒に参加した方の一人は、既にマイアフガンボックスカメラのプロトタイプを作成しているようです。僕も自分のアフガンボックスカメラを構想中です。ひとまずなるべく簡単な構造で作ってみようと思っています。


非常に充実した内容のワークショップでした。今のところ次回の予定は未定だそうですが、興味を持たれた方はバックヤード・プロジェクトをチェックしてみてはいかがでしょうか。自分の手で、その場でプリントを作り上げる面白さは他にないものだと思います。写真の基本がわかりますし、カメラは光を捉える装置だということが非常によくわかりました。ただ写るということがこんなに面白いというのもなかなか体験できないことではないでしょうか。

KYOTOGRAPHIE 2016 3日目

2日目からの続きです。

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今日も活動はお昼から。昼ごはんはちょっとした縁のある三条のインドカレー屋「ケララ」で。カレーはもちろん、トマトスープもしっかりとスパイスが効いてておいしかったです。さあ今日も行ってみよう。

KG#2b Time stands still | サラ・ムーン (招喜庵)

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三条からはそれほど遠くはありませんでしたが、バスを待つ時間がもったいなかったのでタクシーで招喜庵へ。ここは作庭家の重森三玲という人の元お屋敷で、予約すれば庭も見学できるとのこと。タクシーの運転手さんは招喜庵のことは知らなかったものの、重森三玲はご存知だったようで、東福寺や松尾大社の庭が氏の作品であることを教えてくれました。「喜びを招く。いい名前ですね」

展示はお屋敷中に黒いフレームで吊るされた作品が展示され、土間の壁では映像作品が流れっぱなしになっていました。荘厳な感じの映像のBGMが常にお屋敷全体に流れていて、土佐和紙にプリントされたというサラ・ムーンの何とも捉えがたい写真の不思議さを際立たせます。映像は動物園の動物達の白黒の粗い映像で、やはり写真と共通する作風があります。サラ・ムーンがこの作品を写真ではなく映像にしたのは、動物の動きの中に何かを認めたからなのではないかと思いました。この世界に起きている物事に対する興味や、不思議だなと思う気持ち、自然に対する畏怖の念。サラ・ムーンの作品のベースにあるのはそういったもののような気がします。

KG+#9 Out of Sight. | デルフィン・パロディ (白亜荘)

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招喜庵を出て地図を見ると、すぐ近くに副会場の場所を示す数字を見つけたので、行ってみることにしました。着いてみると実に古めかしい、時代を感じる建物です。通りの向かい側は京都大学なので、ここは学生寮なのでしょう。古ぼけた壁に二枚一組で、福島の人々の写真と言葉が貼り付けてありました。場所とマッチしているかどうかは微妙ですが、よいドキュメンタリーだったとは思います。部屋からは楽しげな話し声が聞こえ、学生達の生活を身近に感じながら鑑賞させてもらいました。

KG#10 The Green Train 緑皮車 | 銭海峰 (ロームシアター京都)

格安の列車で中国を旅する人々を撮った作品。見本の写真の雰囲気がとても楽しげで期待していたのですが、この写真以外はあまり土地柄や時代性を感じるものがなく残念。写真に付随して撮影地とチケットが示されていたんですが、鑑賞者が知りたいのは地名ではなくストーリーではないでしょうか。撮影状況や出来事がほんの一言でも付記されていれば、もっと楽しめたのではないかと思います。

KG#9 PLANKTON 漂流する生命の起源 | クリスチャン・サルデ、高谷史郎、坂本龍一 (京都市美術館別館)

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多種多様なプランクトンの美しい顕微鏡写真の展示。海洋調査船「タラ号」での調査結果が元になっているとのこと。プランクトンはそれぞれが実にユニークな色と形をしていて、暗い会場内に黒背景で撮られた写真は細部までよく表現されていました。映像のインスタレーションは、床に並べられたスクリーンにある効果をつけたプランクトンの映像をBGMと共に流すというものでした。全体的に写真と映像は美しかったのですが、写真とプランクトンの名前以上の説明がほぼなく、鑑賞時に惹きつけられたプランクトンへの興味をさらに膨らませる機会を逸してしまっており、それが実にもったいなかったです。会場内の物販スペースでタラ号の広報誌「Le journal Tara Expeditions(日本語版)」が無料配布されており、これが非常に充実した内容なのですが、気付く人は少なそうです。

同京都市美術館では「コンデナスト社のファッション写真でみる100年」も開催されていましたが、こちらは東京で既に観ていたのでスキップ。

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ちなみに近くの公園ではKYOTOGRAPHIEの野外イベントが開かれていて楽しげな雰囲気でした。

KG#5 Sarah Moon 1, 2, 3, 4, 5 | サラ・ムーン (何必館)

サラ・ムーンの新しい作品集の刊行記念展ということで、何必館所蔵のプリントからのセレクト。ギャラリー素形と招喜庵で観た展示があまりに印象的だったので、比較的モダンな造りの何必館での展示は見劣りしてしまいました。特にこれというテーマに絞られていなかったこともあるかもしれません。

KG#7 Tryadhvan | 古賀絵里子 (長江家住宅)

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古賀さんのことは存じあげておらず、KYOTOGRAPHIEのパンフレットを見た時点でもあまり観に行く気にならなかったのですが、昨日のスフェラビルで古賀さんの写真集「一山」を見かけて、これは観に行かねば、と決意。一番最後になってしまいましたが、これが今回最も素晴らしい展示でした。長い長いロール紙に直接モノクロ写真をプリントし、それを京都市指定有形文化財でもある長江家住宅に宙に浮かせるような形で展示していて、それがそのまま作家ご自身の第一子の出産前、出産、出産後という時間の流れの表現になっています。古賀さんの旦那さんは高野山のお坊さんだそうです。穏やかな表情で生まれたばかりのお子さんを抱いている旦那さんの姿は、親と子、時間の流れ、場所の持つ力、漂う静けさなど、様々なものを感じさせる一枚でした。時間の流れの表現は、古賀さんの家族のストーリーとも言え、去るものと生まれてくるものなど、ただ流れていく時間を定着しただけの映像が、実に普遍的で感動的な力を持っていました。


堀川御池ギャラリーの福島菊次郎さんの写真を観られなかったのは残念ですが、観たかった展示はほぼ網羅できたと思います。振り返るとやはり今回はサラ・ムーン特集だったなぁという印象です。三箇所のどの展示も良かったですが、薄暗い招喜庵の座敷が不思議にサラ・ムーンの作品と合っていて、いつか氏がカメラに収めた光が、いまここにこうやって再現されているのだ、ということが、なぜだか強く感じられました。できることなら畳に坐ってずっと眺めていたかったです。

堀川御池ギャラリーの「うまれて1時間のぼくたち」、京都市美術館別館の「PLANKTON 漂流する生命の起源」、誉田屋源兵衛 黒蔵の「Midway: 環流からのメッセージ」、そして長江家住宅の「Tryadhvan」。それぞれ強く訴えるものがあり、言葉はなくとも自然と考えさせられるものがあるという点で一致しています。それを実現しているのはシンプルで巧みに撮影された写真の力と、見せ方の上手さなのではないかと思います。無名舎のマグナムの展示は、写真は素晴らしくても見せ方がうまくないと伝わるものも伝わらない、という好例になってしまっていました。何かを伝える際、写真そのものももちろん重要ですが、その見せ方というのも同じ位重要なのだと感じました。

展示場所そのものも楽しく、今年もいい展示をたくさん観ることができました。来年も楽しみです。

KYOTOGRAPHIE 2016 2日目

1日目からの続きです。

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昨日の夜が遅かったので今日はお昼から。三条のうどん屋さん「うね乃」で若竹うどんを食べました。元々ずっとおだし屋さんをやっていたお店で、うどん屋さんを始めたのは2年前だそう。今回この旅行に持って行った2眼レフで軒先の桶を撮っていたのがきっかけで、女将さんにいろんな話を聞かせてもらいました。記念にとお店の皆さんを撮らせてもらえたので、頑張っていいプリントを作って送る約束をしました。

KG#11 LA-LV / LDN_ Process | アントニー・ケーンズ (SferaExhibition)

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今日の1カ所目は祇園スフェラビルの展示。街を撮影して、その画像をiPadに表示させ、それを感光材料に密着させてプリントするというユニークな方法で制作された作品。他にも電子書籍リーダーのKindleをハックして自作の写真集に仕立て上げていたり、写真を表示させた状態の電子インクディスプレイを単体で作品としていたりと、出力の仕方はなかなか面白かったのですが、写真自体はただ抽象的なだけであまり訴えるものを感じませんでした。コンセプチュアルな作品としては昨日の桑嶋さんの写真と対照的で、こちらはコンセプトに作品を作らされすぎていて絵そのものの面白さに欠ける印象。

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ちなみにスウェーデンのデザイナーが設計したというこのスフェラビルは、ゆったりとした空間をもつ各階を長い階段で繋げていて、地階はカフェ、1階がセレクトショップ、2階がギャラリーになっていました。外装と共になかなか面白い構造をしているので建物を観に行くにはいいと思います。地階の正面には小川があり、まだ5月だというのに子供たちがはしゃぎ回っていました。

KG#12 Light by Erwin Olaf presented by Ruinart | アーウィン・オラフ (Asphodel)

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シャンパンの保存庫を撮ったモノクロ写真。大判で細部まで細かく描かれていますが、シャンパンの予備知識が無いせいか僕には魅力がよくわからず。3階は臨時のシャンパン・バーとなっていましたが、写真展を見に来てついでにシャンパンを飲んで行こう、という人ってどれだけいるのだろうか。京都祇園界隈の上流階級ではそういうことになるのかもしれません。

KG#14 BRICOLAGE PHOTOGRAPHY | K-NARF (村上重ビル)

そうこうしているうちにもう夕方。こちらではフランス人作家が在廊して、自身の作品を実際に制作していました。手製のプリンターで写真をプリントし、インクで汚しを加え、縦横無尽にテープを貼り付けて「ネオ・ビンテージ」写真を作っていく様は観ていて楽しかったです。どんなことを考えながら制作しているのか聞いてみたかったけど、なんとなく機を逸してしまい聞けずじまい。東京で活動をしているそうなので、また会うこともあるかもしれません。

今夜は京都の家で伯父さんと飲む予定なので早めに切り上げ。錦市場で生麩田楽やだし巻きなどおいしいものを買い集めて、京都伊勢丹の日本酒売り場で特集していた「酔鯨」を買って帰宅。錦で買った「ひろうす(京都版がんもどき)」は、昆布と鰹節でだし汁を作って煮て食べました。足りなかった塩味はとろろ昆布でカバー。祖父の遺影に酔鯨を一杯捧げながら、今日もおいしく楽しい一夜でした。

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3日目に続きます。

KYOTOGRAPHIE 2016 1日目

今年もKYOTOGRAPHIEに行ってきました。美術館から京町家まで、京都市中の新旧様々な施設を使って世界各国の写真家の作品の展示が行われる写真イベントで、2013年から毎年この時期に開かれています。多くの作家の写真が一度に観られるのもさることながら、普段は入れないような京都の古い建物に入ることができたり、会場によってそれぞれ趣向を凝らした展示方法も魅力的です。

展示は大きく主会場と副会場(KG+)に分かれていて、主会場の入場にはチケットが必要ですが、副会場は入場無料となっています。主会場は14箇所、副会場は40箇所もあります。パンフレットに主会場の展示内容と位置のわかる地図が載っていますし、各会場で配布されている無料の小冊子に副会場の展示内容が載っているので、あらかじめ大体の見当をつけてルートを設定しておくと見て回りやすいと思います。

前回までは2日間でやや弾丸ぎみに見て回っていましたが、今回は3日かけてじっくり見て回ることにしました。それでも見そびれた展示もありましたが。

KG+#14 真夏の死 | 桑嶋維 (便利堂コロタイプギャラリー)

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日本で唯一、コロタイプという版画技法を使った印刷を行っている印刷所のギャラリー。一辺1m以上の巨大な紙を4つ組み合わせ、コロタイプで刷った徳之島の闘牛(牛同士で闘う闘牛)をプリント。八重山最強と言われた闘牛の姿を、表に現役時代、裏に晩年という形で構成していました。ギャラリーに入るとちょうど桑嶋さんがギャラリートークを始めるところで、いかつい風貌とは裏腹に話が非常に面白く、写真にまつわる話もいくつか聞くことができました。桑嶋さんにとって、写真は自身の研究成果を発表する形であるように思われます。コンセプチュアルなプロジェクトをいかに見た目に面白くできるかという部分に腐心しているという話はとても参考になりました。イギリスのデザイナー集団tomatoとも繋がりがある(なんとこの展示のフライヤーのデザインはtomatoによるもの)というのはとても意外でびっくり。

桑嶋さんの後ろで撮影しているのは中学生の娘さん。とても丁寧にお父さんの作品の説明をしてくれました。

KG#2a Late fall | サラ・ムーン (ギャラリー素形)

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今回のKYOTOGRAPHIEはサラ・ムーンの展示がメイン会場の3つを占め、ここはその一つ。去年銀座のギャラリーでプリントを観てから気になっていた写真家だったので嬉しい。サラ・ムーンの写真の魅力は言葉にするのが難しいです。たぶん言葉以前のものを題材にしているからだと思います。このギャラリーの展示は薄暗い空間での人の背丈ほどもある巨大な写真の展示と短編の映像の上映。特に植物の写真に何かが引っかかるけれども、それが何なのかわからない。この人の写真を観る時はいつもそうです。モヤモヤしたものを抱えながらギャラリーを後にしました。

KG#5 Midway: 環流からのメッセージ | クリス・ジョーダン+ヨーガン・レール (誉田屋源兵衛 黒蔵)

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太平洋のミッドウェー島はアホウドリの繁殖地になっています。しかし近年、人の捨てたゴミが大量に漂着しており、食べ物と人工物を区別できない鳥達がこれを食べてしまう。かくしてアホウドリの多くは胃をプラスチックで満たし死に至るのです。大量のプラスチックにまみれたアホウドリの死体の写真は衝撃的です。そこに写っているペットボトルの蓋は、僕の捨てたペットボトルの蓋かもしれない。写真の持つ大きな力を感じる一方、雑談まじりにギャラリーを後にする学生たちを見るにつれ、その力すら及ばない人々のことを思いました。

KG#6 EXILE–居場所を失った人々の記録 | マグナム・フォト (無名舎)

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アメリカの写真家集団マグナム・フォトが、半世紀をかけて撮り続けてきた、様々な事情で国を追われた人々の姿。京町家の中で、プリントとその説明が書かれた板を手にとって眺めるというのは、普段接点のない人達を近くに感じてもらいたいという試みなのだと思いますが、それはあまりうまくいっているとは思えなかった。これなら点数を絞って大きいプリントで見せた方が良かった。展示方法と主題がマッチしておらず残念。

KG#3 うまれて1時間のぼくたち | ティエリー・ブエット (堀川御池ギャラリー)

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パリ郊外の病院で、生後1時間以内の赤ちゃんを子宮を模した会場内にクローズアップで並べた展示。生まれて数十分しか経っていなくても、もう十分にそれぞれの個性が際立っていて、観ていてとても楽しかったです。赤ちゃんを正面から捉えたごくシンプルな写真だけれど、それがとても力強い表現となっていると思います。シンプルであることは余白があることだ。余白は本質を強調して、広がりを生む。

時間切れで同堀川御池ギャラリーのもう一つの展示は観られず。夜は京都の友人と会って、松尾大社の近くのお寿司屋さんに連れて行ってもらいました。面白いご主人とおいしいお寿司で楽しい夜でした。

2日目に続きます。

ポピー

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母のもらってきたポピー。居間に三脚と黒バック(黒い箱の蓋)を持ち込んで撮影。照明は居間のダウンライト。花弁のにじむようなきらめきに見とれて、写真にできないかと思った。3枚目の花弁を裏から透かして撮った写真で少しそれが出ているが、あの緻密な美しさは表現しきれていないと思う。解像度や色域の問題もあるとは思うが、主として出力メディアの問題という気がする。

35mmフィルムを長巻から自分で作ってみた

単品のモノクロフィルムは高いので、ランニングコストを下げるために長巻から自分でフィルムを詰めてみることにしました。昔は写真を本腰入れてやる人は皆そうしていたようですが、周りに詳しい人もおらず道具もなかったので、自分で調べてなんとか作った過程を残しておきます。

なお、フィルムを詰めるためにフィルムローダーというものが必要になりますが、Lloyd’sのFilm Loaderが安かったです(それでも造りの割に5千円は高いけど)。APなどのものは新品だと1万円以上します。中古でよければネットオークションをあたるのも良いかもしれません。

必要なもの

  • 使用済みのフィルムカートリッジ(または市販の空カートリッジ)
  • 長巻のフィルム
  • フィルムローダー(ディロールともいう)
  • ダークバッグまたは暗室
  • テープ
  • はさみ

下準備

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フィルムローダーに長巻のフィルムを詰めます。この作業は全暗で行わなければならないので、ダークバッグか暗室が必要になります。
今回は通販で安く手に入ったFOMAのFOMAPAN 400を詰めてみます。1巻で7千円ちょっと、1巻からは19本ほどが作れるそうですから、1本あたり400円弱になる計算です。
この長巻は缶に入っていてテープで密封されており、さらにフィルムは黒い袋に入っています。
フィルムローダーに長巻を収める作業は手探りで行うことになるので、まずフィルムローダーを開けて内部の構造を確認しておくといいでしょう。単に長巻をフィルムローダーに収めるだけでなく、フィルムの端をフィルムローダーの排出口から少しだけ出しておく必要があります。フィルムの端切れなどを使って目をつぶって練習しておくといいかもしれません(練習しました)。Lloyd’sのフィルムローダーは、遮光のためにウレタン素材が排出口に貼り付けられていて、ここにフィルムを通すのに少々コツがいります。しかしAPのものなどよりは比較的単純な構造なので、それほど難しくはないと思います。

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準備ができたら、まず長巻の缶のテープを剥がし、その缶とフィルムローダーをダークバッグに入れて閉じます。ダークバッグの中で缶を開け、袋から取り出しましょう。うまくいっていることを祈りながら手探りで長巻をフィルムローダーに収めます。ちゃんと収まったと確信したらしっかり蓋を閉じ、ダークバッグから取り出します。これで準備完了です。

フィルムを詰める

フィルムを詰める方法はいろいろあると思います。フィルム装填用の空のカートリッジに詰めるのも一つの手ですが、空のカートリッジが手に入らなかったので、フィルムの自家現像でできた使用済みのフィルムカートリッジを再利用することにしました。なおYoutubeで”bulk film loading”で検索すると、フィルム装填の実演映像がたくさん出てきて参考になります。これを踏まえて以下の方法でやってみました。

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フィルムの幅の2倍程度の長さにテープを切ります。

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これを長巻側のフィルムの裏側から半分だけ貼り付けます。

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使用済みフィルムの端をテープの反対に置きます。

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テープを折り返して表に巻きつけます。左側の端は一度折り返してタブ状にしておきます。こうしておくと現像でリールにフィルムを巻きつける時にテープを簡単に剥がせるので、ダークバッグの中ではさみを使う必要がなくなります。手探りではさみを使うの、緊張するんですよね。

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カートリッジをフィルムローダーに収めます。フィルムを少しカートリッジに押し込んでおくとやりやすいです。

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蓋を閉じ、ハンドルを挿入します。カートリッジの芯とハンドルの芯がかみ合うまで角度を変えつつ押し込む必要があります。このくらいまでハンドルが入ったらOKです。

フィルムローダーに貼ってあるシールに回転数と撮影枚数の表があるので、これに従ってカートリッジに入れたい分だけハンドルを回します。今回は10枚分だけ入れてみることにしたので13回転。36枚撮りにしたい場合は30回転ですね。

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巻き終わったらハンドルを抜き、カートリッジを出して適当な長さでフィルムを切り離します。終端をはさみでカメラのスプールに巻き取りやすい形に整えて完成です。ついでにフィルム名を書いたテープを貼っておきました。

撮影後現像してみた

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長巻をフィルムローダーに収めるのが少し難しいですが、それ以外はわりと簡単でした。現像してみたフィルムも特に問題なさそうです。FOMAPAN 400は粒状感は高いですがトーンの豊かさは悪くないと思います。たくさん使ってフィルムローダーの元を取らねば。

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なおLloyd’sのフィルムローダーのハンドルですが、買ったままだと軸の先端のエッジが立っていて非常に差し込みづらいので、やすりで面取りしておくと使いやすくなります。あとネジの部分は回りづらいので油差しておくといいです。このへんの雑な作りがアメリカンテイストです。

キャンソンの印画紙比較(日本写真学院ファインアートプリント勉強会)

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以前モノクロ写真クラスを受講した日本写真学院で、今度はファインアートプリント勉強会というのを受講してきました。岡嶋和幸先生指導のもと、フランスの印画紙メーカー「キャンソン」の扱っている全13種類の印画紙に、自分の写真をプリントできるというもの。

日本写真学院の実習室(The Bright Room)の環境としては、Mac mini+Eizoの外部モニタ、Adobeの最新ソフト一通り、プリンターはそれぞれのMacにEpsonのPX-5Vという顔料インクのプリンターが接続されており、全員が同時にプリントできるようになっています。ちなみにこの部屋は日本写真学院の特定のクラスを修了すると時間制でレンタルできるようになるそうです。学院では市場価格よりかなり安く、かつ1枚単位で印画紙をプリント代込みで購入できるそうで、最終出力の際に利用するのがおすすめとのこと。

他の参加者の皆さんは一枚の写真のみでプリントされていましたが、僕はいろんな種類のプリント結果を見たかったので、欲張りにもカラー2枚+モノクロ2枚の計4枚の写真をレイアウトしてプリントしてみました。プリンターの操作は設定項目が多く混乱しがちなものですが、事前に岡嶋先生がまとめておいて下さった設定表に従って一枚ごとに設定していけばいいので簡単でした。プリント実行の際に必要になるものの1つにICCプロファイルというものがあり、これは特定の紙とプリンターに合わせた設定(紙の白さ、階調性、プリンターの特性など)がまとめられているファイルで、メーカーのサイトからダウンロードしてプリント時に利用するそうです。ただしモノクロプリントにはICCプロファイルは使わず、プリンターによるカラーマッチングを使用することをメーカーは推奨しているということでした。

以下に実際のプリントと雑感を。
(それぞれ上段の画像はクリックして拡大できます)

光沢系

光沢系の紙の違いはマット系に比べると微妙な差ですが、それぞれの紙を見比べるとやはり白さや質感が違うのがわかります。

フォト・グロス・プレミアム・RC (Photo Gloss Premium RC)

Canson, Paper, Photo Gloss Premium RC
Canson, Paper, Photo Gloss Premium RC-2

フォト・ハイグロス・プレミアム・RC (Photo Hi Gloss Premium RC)

Canson, Paper, Photo HiGloss Premium RC
Canson, Paper, Photo HiGloss Premium RC-2

その名の通り光沢感の高い2種。今回の比較した紙の中ではフォト・ハイグロス・プレミアム・RCが一番光沢感が高いものの、フォト・グロス・プレミアム・RCと比べるとその差は微妙。ハイグロスの方がやや暖色寄りの白。

フォト・ラスター・プレミアム・RC (Photo Lustre Premium RC)

Canson, Paper, Photo Lustre Premium RC
Canson, Paper, Photo Lustre Premium RC-2

フォト・サテン・プレミアム・RC (Photo Satin Premium RC)

Canson, Paper, Photo Satin Premium RC
Canson, Paper, Photo Satin Premium RC-2

バライタ・フォトグラフィック (Baryta Photographique)

Bryta Photographique, Canson, Paper
Bryta Photographique, Canson, Paper-2

プラチナ・ファイバー・ラグ (Platine Fibre Rag)

Canson, Paper, Platine Fibre Rag
Canson, Paper, Platine Fibre Rag-2

絹目調の印画紙4種。ラスターとサテンはかなり似ているが微妙にテクスチャが異なり、サテンの方がテクスチャがやや細かい。バライタ・フォトグラフィックは独特の自然で落ち着いた風合いが感じられ、高級感がある。今回一番のお気に入り。プラチナ・ファイバー・ラグは艶のあるマット紙のようでかなり凹凸が大きく、紙質が写真そのものの印象を大きく変えそうです。

マット系

光沢系に比べ、マット系にはテクスチャの強い、個性的な紙が多いです。個性的な紙に負けない写真を選ぶのはなかなか難しく、下手すると写真ではなく紙ばかり見られる… ということになってしまうようです。光沢系の紙に比べ、総じて暖色系。

マット系の紙は厚みがあるため裁断時の紙粉がつきやすく、プリントの際には紙粉をよく払うなど気をつけて取り扱わなければいけません。また染料インクのプリンターでプリントすると滲んでしまうので、顔料インクのプリンターを使用する必要があります。

ラグ・フォトグラフィック (Rag Photographique)

Canson, Paper, Rag Photographique
Canson, Paper, Rag Photographique-2

マット系の中では一番きめが細かく扱いやすそうな紙。無個性というわけではなく高級感もあるし、光沢系のような反射がないのでリアリティも感じられる。マット系では一番好きな質感。

BFKリーブス (BFK Rives)

BFK Rives, Canson, Paper
BFK Rives, Canson, Paper-2

エディション エッチング・ラグ (Edition Etching Rag)

Canson, Edition Etching Rag, Paper
Canson, Edition Etching Rag, Paper-2

アルシュ ベラン ミュージアム・ラグ (Arches Velin Museum Rag)

Arches Velin Museum Rag, Canson, Paper
Arches Velin Museum Rag, Canson, Paper-2

アルシュ アクアレル・ラグ (Arches Aquarelle Rag)

Arches Aquarelle Rag, Canson, Paper
Arches Aquarelle Rag, Canson, Paper-2

モンバル アクアレル (Montval Aquarelle)

Canson, Montval Aquarelle, Paper
Canson, Montval Aquarelle, Paper-2

それぞれ質感の異なるマット紙5種。アルシュ アクアレル・ラグは凹凸が大きく一目でわかるが、それ以外の差は微妙なところ。しかしいずれもはっきりとわかる質感があるので、細部を表現したいような写真には向かないようです。ちなみにエディション エッチング・ラグは綿100%。

フォトアート HD キャンバス (Photoart HD Canvas)

Canson, Paper, Photoart HD Canvas
Canson, Paper, Photoart HD Canvas-2

なんと布製の印画紙。裏地はキャンバスそのもの。プリント面もはっきりと布とわかる質感。一体どんな写真ならこんな個性的な紙に負けないのでしょうか。

総評

カラープロファイルについてすらイマイチよくわかってないまま参加した今回の勉強会でしたが、教室の雰囲気もよく、プリントもきれいなものが得られて満足でした。今すぐ何かに役立つということはないにしろ、展示などで最終出力先を選ぶ際には今回作成したプリントが非常に参考になると思います。紙にはそれぞれ特性があり、表現できるトーンの幅も異なるため、どんな紙に出力するかを考えた上で写真のデータを作っていくのが大事、という先生のお話は特によく覚えておこうと思いました。

正直なところ、画面では紙の良さはほとんど伝わらないと思うので、興味を持たれた方はヨドバシカメラなんかの店頭に置いてあるサンプルを確かめてみるのがいいでしょう。ただ、ああいったサンプルは全部同じ写真でプリントされておらず、比べにくいのが難点ですね。

なおキャンソンではほとんどの種類を網羅したお試しセット「ディスカバリーパック」というのもあるそうなので、こちらを買って自分でプリントしてみるのも一つの手です。マット紙には顔料インクを使えるプリンターを用意する必要がありますが。

輸入代理店のキャンソン製印画紙一覧ページはこちら

デジカメをフィルムスキャナ代わりに使う

IMG_1213

ライトボックスとデジカメを組み合わせるとフィルムスキャナ代わりになるんですが、いくつか問題があります。

  1. ライトボックスにネガを置いただけだとフィルムの平坦性が保てない
  2. カメラの最短撮影距離が長すぎて十分フィルムに近づけない
  3. マクロ撮影ではピント面が浅いのでピントが合わせづらい

こういう場合、ニコンのスライドコピーアダプタを使うのがベストなんでしょうけど、僕のカメラとは機種が違うのでマウントが合いません。わざわざこのためにマウントアダプターを買うのもちょっと。

要はレンズ前面からフィルム面までの距離を一定に保てて、かつフィルム面が平坦にできる筒があればいいわけです。これには綿棒のケースがぴったりです。

DSCF0400

綿棒のケースの底に、フィルムのコマよりわずかに大きい穴を開け、蓋の方には使用するレンズのフード取り付け部の形に合わせた穴を開けます。どっちがどっちでもいいんですけど。

綿棒のケースの底はフチが出っ張っています。フィルムに接する面は平らにしたいので、穴を開ける時に作った型紙を貼り付けました。これで平坦性の確保と撮影距離の固定ができるようになりました。

最短撮影距離の短縮にはカメラとレンズの間に挟むマクロエクステンションチューブを使いました。ただこれを使うと周辺部が流れがちになってしまうので、なるべく絞って周辺の画質を保つ必要があります。

DSCF0385

母の日記帳で遊ぶ姪。

モノが綿棒のケースなだけに安定性はイマイチで、あまり遅いシャッタースピードを選べません。大きなデジイチでの使用には向かないでしょう。手持ちの機材でのトリミング後の解像度は約2800×1900ピクセルで、トーンもそれなりに出ているので、ある程度は引き伸ばしにも耐えられそうです。モノクロフィルムはモノクロ印画紙にプリントするのがベストでしょうけど、家のプリンタでもプリントできると便利ですね。

データ取り込み後はトリミング、トーンの修正、ゴミ除去とけっこうやらなければいけないことは多いですが、気楽に好きなコマを自分のペースで読み込んで調整できるのはいいところかと思います。それにしてもネガのラチチュードは本当に広い。デジタルでは情報が無くなってしまう真っ白/真っ黒なところもちゃんとトーンが残っているので、調整の自由度がとても高いです。

使用機材:
Fujifilm X-T1
Fujinon XF 35mm f/1.4
マクロエクステンションチューブ MCEX-11
ハクバ ライトビュアー5700
綿棒のケース
カッターナイフ
定規
図工の時間気分

フィルムの自家現像に挑戦してみた

先月、日本写真学院でモノクロ写真クラスを受講して、フィルムの現像から引き伸ばし機を使ったプリントまでモノクロ写真の一通りの行程を習いました。で、プリントには暗室が要るのでおうちで気軽にってわけにはいかないのですが、フィルムの現像は必要なものさえあれば比較的簡単にできるようなので挑戦してみました。

現像にあたっては、モノクロ写真クラスでとったメモと、Silversaltのフィルムの現像手順を参考にしました。

概要

  1. 現像タンクにフィルムを巻いたリールを入れる
  2. 薬品やら水やらをタンクに入れたり出したりする
  3. 乾かす

簡単に言うとこれだけです。モノクロフィルムの現像は、カラーフィルムの現像に比べてかなり融通が効くらしく、ある程度いいかげんでも現像はできるようです。

用意したもの

現像用品

  • 現像タンク
  • リール
  • 計量カップ
  • メスシリンダー
  • 現像薬品の保存用ボトルx2
  • 現像液(Kodak T-MAX現像液)
  • 定着液(ILFORD RAPID FIXER)
  • フィルムピッカー
  • フィルムクリップx2セット
  • フォトスポンジ
  • 温度計
  • ダークバッグ(チェンジバッグともいう)
  • 時計
  • はさみ
  • 撮影済のフィルム
  • ネガシート

現像薬品は粉から作るタイプもあるのですが、調合がめんどくさそうなので原液タイプのものを購入しました。

現像タンクはパターソンのスーパーシステム4現像タンクで、リール2個つきです。ただ液温管理には熱伝導率のいい金属製のタンクの方が有利らしい。

現像用品のほとんどはSilversaltが良心的な値段だったのでこちらで購入。現像薬品とフォトスポンジだけヨドバシで購入。

現像手順

前日の夜に現像薬品をボトルに調合しておきました(その方が安定するそうなので)。現像液、定着液どちらも5倍に希釈して使います。600mlずつ作りたかったので、原液120ml+水480mlで使用液を作成。

停止液の代わりに水を使用しました。また、現像前の前浴、2回目の定着処理、水滴防止処理を省略しました。どれも必要性を感じてから組み込めばよさそうなので。

Kodakの現像データによれば、T-MAX現像液を使用してTRI-X 400フィルムを液温24度で現像する際の時間は4分45秒ということなので、これを現像時間の目安とします。

事前準備

ダークバッグ

  • 現像薬品を調合しておく
  • 風呂場を温めておく(冬なので)
  • 液温調整用のお湯を沸かす(夏場なら氷?)
  • フィルムピッカーでパトローネに入ったフィルムを引っ張り出す。ダークバッグに現像タンク、リール、フィルム、はさみを入れて閉じ、フィルムをリールに巻きつけて終端を切り、現像タンクに入れ、中ぶたを閉じる(遮光する)
  • 水を張った桶に薬品のボトル、現像タンク、温度計を入れる。液温管理はこの桶の水で行う。

パターソンのリールへのフィルムの巻きつけ方は、こちらの映像が参考になりました。

現像と乾燥

現像タンクと現像薬品

  1. 現像 (時間は現像液とフィルムによる)
    現像液をタンクに入れ、最初に30秒撹拌、[50秒停止・10秒撹拌]を繰り返し、終了15秒前に現像液排出(またはボトルに戻す)。
  2. 停止 (30秒)
    水をタンクに入れ、10秒撹拌、10秒停止、10秒撹拌。水を排出。
  3. 定着 (3分)
    定着液をタンクに入れ、最初に30秒撹拌、[30秒停止・10秒撹拌]を繰り返し、定着液をボトルに戻す。
  4. 洗浄
    水をタンクに入れ、5回反転して水を入れ替え。10回、20回で繰り返し。
  5. 乾燥
    フィルム上端をフィルムクリップで留め、吊るす。フォトスポンジでムラの無いように上から下に拭う。フィルム下端にオモリになるものを留める。乾燥が完了したら、適当なコマ数で切ってネガシートに入れる。

わかったこと

DSCF0310

  • 若いコマのフィルムの上辺が少し感光している。現像タンク内での遮光が完全ではなかったかもしれない。
  • この時期に自然乾燥させるとフィルムにかなりきついカールがかかる。風呂に少しお湯を張って湿度を上げると改善した。
  • 乾燥時にフィルムの拭い方が雑だと、フィルム上に水滴の跡が残り、しかも乾燥するまで非常に時間がかかる。フォトスポンジを均一に押さえて拭う必要がある。水滴防止剤か、蒸留水+アルコールを使った方がいいかもしれない。
  • フィルムの乾燥はクリップつきのハンガー(上の写真)で十分だった。オモリは普通の洗濯バサミでいい。フィルムクリップいらない。
  • Silversaltの記事を参考に、停止液の強度を使用前と使用後でテストしてみたが、クリアタイムに変化はなかった。ただし5本使用後はわずかにフィルムの透明度が落ちているようだ。
  • パターソンの現像タンクの蓋が固くて閉めるのにコツがいる。指が痛い。

現像を終えて

DSCF0317

今回現像したフィルムは、Kodak TRI-X 400が3本、ILFORD XP2が1本、Rollei RPX 400が1本の計5本。最初にTRI-Xを一本ずつ3回に分けて、最後にXP2とRPX 400をまとめて現像しました。XP2はカラーネガ現像できるモノクロフィルムですが、普通にモノクロ現像しても問題ないようです。

規定の現像時間(4:45)では、やや現像不足に感じられたため、2回目では現像時間を1分長めに取りました。また現像液は使い捨てにせず再利用したので、現像液の疲労度合いを考えて、以降の現像時間は30秒ずつ長くしました。すなわち

  • 1回目 4:45
  • 2回目 5:45
  • 3回目 6:15
  • 4回目 6:45

となりました。2回目以降のネガの濃度は問題ないようです。

昼の13時に始めて、洗浄まで終わったら17時になっていました。なかなか時間のかかる作業ですが、自分の手で写真を作っていく面白さがあります。最初の3回は1本ずつ現像したこと、試行錯誤しながらだったことを考えると、次回は半分くらいでできると思います。


2015/11/28 初出
2015/11/30 概要を追加
2016/03/09 リール巻き取り映像のリンクを追加

キョウバシラウンジ 小林正明 Visual Communication Now! 講座に行ってきた

川の畔のお地蔵様

写真は好きだけど、いまいち写真でなにをやりたいのかが定まらない。今後もっと深く写真と関わっていきたいけれど、深く広い写真の世界に、どんな形で関わっていったらいいのだろうか。そんなことを考えていた矢先、京橋のTokyo Institute of Photography (TIP)で、写真業界の最新トレンドと今後についての講座が開かれるというので、行ってみることにした。写真素材サービスの老舗、ゲッティイメージズジャパンの小林さんによるお話。

ゲッティは1995年にロンドンで設立され、商用の写真、映像、音楽等の素材を提供している会社だ。そこで小林さんは日々大量の写真を見、「売れる写真」を探している。写真には大きく分けて、報道、広告、アートの3つの分野があるが、小林さんが扱うのは主に広告の写真なので、講座の内容としても広告写真が中心となった。「広告写真はその時代を写す」と小林さんは言う。今の写真のトレンドを知ることで、これからどう移り変わっていくかが見えてくるという。ゲッティの見る近年の写真のトレンドは「Glitch(見てざわざわする、少し奇妙な表現)」、「Point of View(主観視点、体感型)」、「Super Sensory(五感に訴える表現)」の3つ。極端に顔のブレた写真(Glitch)、歯医者のベッドの上で歯科医さんに顔を覗きこまれている写真(Point of View)、お菓子を食べている口元の超クローズアップ(Super Sensory)などを例に挙げていた。

商業写真を扱う立場からの視点ということは念頭に置きながら聞く必要があったものの、日々大量の質の高い写真に接している氏の言葉にはいちいち重みがあった。自らを写真狂と呼ぶほど写真が大好きだということもよく伝わってきたし、それが講座をずいぶん楽しいものにしていたと思う。スライドの文字は小さすぎて読めなかったけど。「ドアはノックしなきゃ開かない(写真コンテストに応募しろ)」「クリエイティブはここにある、見つける、作るものだ」「継続することが大事」「自分の作品は他と何が違うのか、明快に説明できるように」「自分の世界を客観的に見る機会は絶対に必要」など、商業写真家を目指さないとしても参考になる言葉は多かった。

講座の後には、参加者が持ち寄った各自の写真を小林さんにレビューしてもらう時間があり、僕も意見を伺うことができた。そこで聞いた小林さんの言葉も参考になったが、他の参加者の写真の完成度が驚くほど高く、自分の現在位置をまざまざと見せつけられ、たっぷりと凹んで帰途についた。

写真をやっていく一つの手段として、素材として求められているものを撮るというものがあるということがよくわかった。しかしそれは自分を時代に合わせるということなので、僕のやりたいこととは違っている気がする。やりたいことが見つかるまで、求められているものを撮るという手もあるかもしれない。そんな器用なことができるかどうかはわからないが。